春の二冠馬オルフェーヴルが、日本競馬史上7頭目の三冠馬になれるかどうかに注目が集まる、牡馬クラシック最終戦・菊花賞。果たしてそこに死角はあるのか、そこを突けるとすればどんな馬なのか。さっそく考えてみましょう。 菊花賞(3歳G1・京都外15F) 2006:58.7-63.5-60.5=3:02.7[35.6](ソングオブウインド) 2007:60.7-63.6-60.8=3:05.1[36.2](アサクサキングス) 2008:58.8-66.7-60.2=3:05.7[35.3](オウケンブルースリ) 2009:59.9-63.2-60.4=3:03.5[35.8](スリーロールス) 2010:61.0-64.5-60.6=3:06.1[35.6](ビッグウィーク) ※「5F×3」で表記、[ ]内はレース上がり3F、( )内は勝ち馬。 こうして見ると分かりづらいですが、ハロンラップを見ると毎年道中に「12秒台後半」以上、時には「13秒台」の遅いラップが複数連なり、2周目3コーナーの下りで一気にペースアップしラスト4F以上では「12秒台前半」以内、直線では「11秒台」に突入する速いラップが刻まれるという、後半の加速が重要なレースになっています。 春の頂上決戦・ダービーでも上がり4Fは速いラップが並ぶので、この実績は当然重要ですが、しかし12Fから一気に3Fの延長になるので、なかなかそのままの結果にはなりません。過去5年でも、06・08・09・10年はダービー不出走馬が勝ち、出走したダービー馬(06年メイショウサムソン)は3着すら外しています。「相性がいい」と言われるダービー2着馬も、07年アサクサキングスこそ勝ちましたが他の4回は3・16・5・2着と人気を上回れない着順に終わっています。 これはダービーの中盤があまり緩まないので、底力は問われるが菊花賞ほどギアチェンジの能力が問われないという、資質の問題が大きいと見ます。つまり、菊花賞は「3000mのステイヤー決戦」という字面のイメージほど真のスタミナが問われず、しっかり緩めて下りで加速し、外回り向きの切れ味を繰り出す資質が重要なのです。 しかし成長途上の3歳の秋では、これだけの距離を走った後の切れ味に限界があるのも頭に入れておくべきでしょう。上記のとおり、中盤5Fが66秒台と歴史的スローになった08年でも、レース上がりは35秒台に留まっており、先行有利・内枠有利の展開的な紛れが生じる結果になっています。 資質的には「厳しい流れのダービーで底力を見せて、緩い流れのトライアルで切れ味を見せる」というのが、やはり王道パターン。格の高いレースで底力を見せ付けた上で、直前では消耗が少ない臨戦過程がベストと考えていいでしょう。 今年のダービーは不良馬場だったので評価は難しいですが、単純に馬場差を修正すれば中盤緩み過ぎない底力勝負だったと言ってよさそう。その上で神戸新聞杯では超スローから上がり32秒台で完勝したのですから、まさに王道中の王道で、能力的な死角は小さいと思われます。 結局オルフェーヴルの最大の敵は、前述のような「先行有利・内枠有利」の展開でしょう。東京で行われた春クラシックの直線での加速は際立っており、特にダービーのあっという間に抜け出す脚は群を抜いていただけに、距離延長での「加速」自体は信頼に足るもの。問題はカーブで進出した実績が乏しいことだけで、直線に入る前に出し抜くような競馬ができるタイプに付け入る隙がある、と見ます。 中盤速いレースで進出するレースを見せた馬ということで、きさらぎ賞や若葉S組に注目。もちろんオルフェーヴル自身も9F急流のスプリングSで「11-9」と中盤ポジションを上げており、早めに動き出して押し切る可能性もない訳ではありません。その場合は素直に、相手も「中盤-上がり」でいい脚を使った皐月賞・ダービー上位ということになりそうです。 これらのなかで、前哨戦で資質の補完ができた馬をピックアップして行くべきでしょう。神戸新聞杯は前述のとおり超スローなので切れ味、セントライト記念はハイペースだったのでスピード・底力を証明できた前哨戦で、春までにこれを補う部分の実績があれば合わせ技で狙いやすくなる、という図式です。 ●注目馬=オルフェーヴル・ウインバリアシオン・サダムパテック(持続力示した春クラシック上位馬)、トーセンラー・フェイトフルウォー・ユニバーサルバンク(春の資質を秋の前哨戦で補完)。
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