最速の月曜公開!全重賞の展望をお届けします
※月曜段階の予想ですので回避馬が含まれるケースがございます。あらかじめご了承ください。 朝日杯フューチュリティSはミスエルテ、皐月賞はファンディーナ。今年の3歳牡馬はここまでの大レースで、いずれも1番人気を牝馬に奪われています。こんな世代は空前絶後かもしれません。 ただし、両レースとも牝馬は馬券圏外に沈みました。勝ったのは両方人気薄ながら、適切なステップを踏んでいた馬。それを考えると、今年の3歳牡馬を『レベルが低い』と軽く見るのは、早計であることがわかるはずです。 ミスエルテやファンディーナのように、相手関係はともかく派手な勝ち方を続ける馬を見て、私達は「強い」と思ってしまいますが、それはあくまで印象に過ぎません。両牝馬のような目立つ存在が、今年の3歳牡馬にはなかなか現れませんでしたが、それはこの世代に有力馬が多数ひしめいていることの裏返しと考えられます。 見た目の印象に惑わされるのはもうやめましょう。ダービーを勝つために準備ができている馬はどれか。フラットな視点で出走各馬をスクリーニングしていきます。 1.圧勝したことはあるか? ここでは0.4秒差以上の勝利を「圧勝」と定義します。過去10年のダービー馬のうち8頭にはダービーより前に「圧勝経験」がありました。例外はワンアンドオンリーとエイシンフラッシュ。ドゥラメンテ、キズナ、ディープブリランテ、ロジユニヴァース、ウオッカは、それぞれ2回の圧勝実績を持っていました。 2.差す競馬を教え込まれているか? フルゲートの東京芝2400mを先行して押し切るのは至難の業。ダービーでの勝利を本気で狙う馬ならば、それ以前のレースでは目先の勝ちのために安易に先行させず、我慢して差す競馬を教え込むのがセオリーです。過去10年、前走で4コーナーの通過順位が3番手以内だった馬のダービー成績は[0-3-4-34]。逆に、4コーナー通過が7番手以下の馬が7勝、10番手以下に限定しても6勝を挙げています。 3.皐月賞は着順より人気 皐月賞は、同世代の有力馬が初めて一堂に会する舞台。そこでの単勝人気は、皐月賞の勝ち馬予想であるのと同時に、各馬のそこまでの戦歴の総合評価という側面も持ち合わせます。中山芝2000mは展開による結果のブレが大きいコースですから、着順よりは人気のほうが、序列としてより信頼できます。とくに今年のような混戦の年であればなおさらでしょう。過去10年、皐月賞で5番人気以下だった馬のダービー成績は[1-0-1-41]。一方、4番人気以内だった馬は[6-6-4-20]。 今年のメンバーで「圧勝実績」があるのは、以下の馬たち。 アドミラブル(3回)、クリンチャー(2回)、ペルシアンナイト(2回)、サトノアーサー、スワーヴリチャード、ダイワキャグニー、ダンビュライト、トラスト(JRAでは1回) 単勝候補はこの中から選びたいところです。 アドミラブルの3勝がすべて圧勝というのは、トップクラスと当たっていないことを考慮しても、とてつもない戦歴と言えます。「なにが1番強いのか」と問われたら、この馬以外に答が思い浮かびません。ただ、ここで問われているのは「なにがダービーを勝つか」という問いです。 アドミラブルは3月頭の未勝利勝ちから使い詰め。ちなみにその日は弥生賞の当日で、他のほとんどの出走馬より、アドミラブルはこの期間に1走以上多く走っていることになります。 前哨戦→皐月賞→ダービー。叩き3走目のピークでダービーを迎えるローテーションを組むのがセオリーです。アドミラブルは前走が3走目でしたから、「青葉賞がピークだった」という可能性を検討する必要があります。ちょうど、皐月賞時のファンディーナと同様です。 また、アドミラブルは前走の青葉賞でもその前のアザレア賞でも、早めに脚を使う競馬をして、4コーナーではそれぞれ4番手と2番手。ダービーを勝つために必要な我慢を、レースで教えられてきたわけではありません。もちろん、この短期間にダービー出走にこぎつけたこと自体が称賛すべきことですが、そこから先の準備ができているかどうかは別の話。印としては不動の「▲」という扱いになります。 スワーヴリチャードは共同通信杯を2馬身半差で圧勝。上がりのキレ味勝負になりやすい共同通信杯は着差の開きにくいレースで、これ以上の着差となると、前世紀のナリタブライアンまで遡らなくてはなりません。今世紀に入って、共同通信杯を差して2馬身差以上で勝った馬は、他にジャングルポケット(ダービー、ジャパンC勝ち)だけ。東京競馬場でキレ味が抜群であると証明することは、大きな価値があります。 皐月賞では内枠から抑え込んで後方待機を選択したことで、外を回して差し届かない結果(6着)に終わりましたが、これはもちろん、ダービー2勝の経験を持つ四位騎手による教育の一環です。もともと右回りでは手前の替え方がぎこちない馬で、典型的なサウスポーですから、皐月賞よりダービー向きであることは明らか。それなのに皐月賞より人気が落ちるとしたら、おかしなことだと思います。 クリンチャーは皐月賞までに3戦2勝、2圧勝。他馬より早めに動き出しても最後まで1F12秒そこそこの脚が持続する、並外れたスタミナの持ち主です。なにより心強いのが、鞍上の藤岡佑介騎手がその特色を充分に理解して競馬を組み立ててくれること。前走の皐月賞4着は、圧勝続きの戦歴が伊達ではなかったことと同時に、人馬の戦術の完成度の高さを証明しました。 不安材料は、ディープスカイ産駒らしくキレ味に欠ける点です。前走の4着も、力負けというよりキレ味負けという内容でした。ディープスカイ産駒は、東京芝の瞬発力勝負を苦手にしていて、これまで東京芝では54戦して未勝利。ただし、ディープスカイ産駒には、芝の重馬場で勝率が12%で、不良馬場になると25%というデータもあります。天気が崩れるようならチャンスは充分。 カデナは京都2歳Sと弥生賞の勝ち馬。ゆったりした流れからの瞬発力勝負では確実に結果を出しています。離して勝たないため、戦歴のわりに地味な印象ですが、福永祐一騎手による「ダービー教育」のカリキュラムはほぼ完璧に消化しています。圧倒的な能力は感じにくいものの、相手なりに走れる馬で、すべての状況が好転する今回は、連下筆頭「☆」という評価。 ペルシアンナイトは、最近出世レースになっているアーリントンCの3馬身差圧勝が光ります。また、新馬戦がコーナー4つの小倉芝1800mで、2着に3馬身、さらに3着が5馬身という大圧勝でした。3歳限定の芝2400mで、距離延長を云々されるような馬ではありません。 スピードが豊富で早めに動けるのが長所で、皐月賞も含めて好走レースはすべて早め先頭に立つ形。逆に言えば、ここまでの戦いぶりは、ダービーの最適解とはやや異なるのは事実です。乗り方の微調整が必要になるダービーで、ミルコ・デムーロ騎手が乗り替わりになるのは痛恨でしょう。ただ、それでも戸崎圭太騎手を確保できたのは不幸中の幸いでした。 サトノアーサーは圧勝したシクラメンSのあとは、重賞で惜敗の連続。勝った新馬戦も同着の辛勝でしたから、シクラメンS以外は見る者をガッカリさせてきた部分は小さくありません。それでも無理使いすることなくダービーに出走してくるのですから、やっぱりたいした馬だと思います。 毎日杯からの直行は、異例のローテーションになりますが、レース直後には決定していたように、予定通りの行動です。なにしろ毎日杯とアーリントンCからのステップで皐月賞をワンツーした池江泰寿調教師ですから、成算があってのことでしょう。自慢の爆発的な末脚がダービーの舞台で花開くか。あとは週末の好天を祈るだけ。 ダイワキャグニーはプリンシパルSをレースレコードで圧勝。離して先行する3頭を追って全馬が早仕掛け気味になる息が入らない流れを、前々の競馬をして最後突き放したのですから、驚くべき強さでした。これで左回りでは3戦全勝。敗れた弥生賞は、慣れない右回りで自滅したというレース内容で、ある意味まだ底を見せていません。 プリンシパルSからのステップは簡単ではありませんが、今回クリンチャーが早めに動いていく展開を想定するならば、プリンシパルSはラップ的に格好の予行演習になったのでは? 例年のプリンシパルS勝ち馬にはないアドバンテージが、展開面で発生する可能性があります。
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