問答無用の決定力!週末の特別レースを完全に制圧します!
【楽天的であれ】ゴールドシップは、皐月賞・菊花賞・有馬記念・宝塚記念などGIタイトルを4勝。その一つ一つが、心に深く沁み込んでいる。能力の起点であり、最大限の発露は、3歳秋の、あの菊花賞。前半1000mが1分0秒9-1000-2000m間は1分1秒2-2000-3000mが1分0秒8という、精密なラップを踏み、終わってみればレコードに0秒2差の3分2秒9で完勝。強く雄々しいステイヤーの誕生を、皆の瞳に焼き付けた。 思えば前年のオルフェーヴルも、菊花賞・3分2秒8が、自身のアイデンティティーの一つだった。前走の京都大賞典は、よもやの5着に敗退。外枠12番から宝塚記念同様押して出て、前目の5番手あたりで、最初の1200mは1分13秒8のスロー。ただ、7Fから11Fにかけ、11秒7-11秒4-11秒1-11秒6-11秒3と、ラップは急転。その激流を終始外を回して深追いしては、さすがのゴールドシップもたまらない。斤量は58キロ。休み明けにもかかわらず、体重はマイナス2キロ。GI・4勝の実績を思うがゆえに馬を攻めすぎた、陣営やジョッキーの気負いも影響したように思う。近年のJCの決着タイムやラップを見ると、なるほど瞬発力勝負が大勢。言われているように、瞬発力勝負に弱点を抱えているし、自身の使えるマキシマムは、1F・11秒フラットあたりだろう。 極端な10秒台半ばの攻防となると、さすがに対応しきれないけれど、一敗地にまみれたダービーでも上がり33秒8の最速の上がりは駆使。過去のJC優勝馬は、瞬発力型か底力型かの二通り。タップダンスシチー、ゼンノロブロイ、ローズキングダム、そしてブエナビスタは、10秒台の切れというよりは、11秒そこそこのラップを羅列する、総合力型の馬だった。ゴールドシップの、弱点にこだわりすぎるのも、落とし穴になる。この中間短期放牧に出しガス抜きをはかり、前走とはひと味違う馬造りができている。数字云々ではなく、馬体の造りも格段にシャープだ(菊花賞当時と似ている)。 思えば、父はステイゴールド。その産駒たちは、オルフェーヴルやゴールドシップ然りで、途方もないパフォーマンスをやってのける反面、脆さも常に同居している。しかし、競馬とは(馬券とは)、明日へ漕ぎ出す勇気。馬が船なら、騎手や馬券を買うワタシたちは水夫。世界の海も競馬の世界も、今やデータや記録という精巧な羅針盤が行く末を指し示してくれもするが、たとえあやふやなステイの仔という舟に乗船したとしても、水夫というものは常に楽天的であれ。悲観的な船乗りというのは、いないもんです(笑)。 もちろん、ジェンティルドンナは強敵。東京2400mのオークスを、2分23秒6・5馬身差で独走。昨年のJC優勝タイムは2分23秒1。1000m通過が60秒8-2000m通過は2分0秒1とう平均ラップの上に立ち、上がり4Fはすべて11秒台。11秒7-11秒5-11秒5というレースラップを(3Fは34秒7)、1秒9も上回る、32秒8の末脚を駆使し、推定10秒台の爆発的な脚力でオルフェーヴル以下を完封。記録なら断然だ。 ただ、天皇賞は勝ち馬の加速力には脱帽せざるをえないとはいえ、昨年と違ってトモ回りのラインがどこか寂しい。前半脚を小出しに使い、末を甘くしたという理由もあるが、去年頃は残り1Fでもう一段ギアがあった。ムーアなら、折り合いもガッチリ。たとえ完調でなくとも、無理やりでも動かせるけれど、追い比べになればゴールドも、並べばアゴを突きだして動く。 割って入ればルルーシュ。前年は、アルゼンチンの2分29秒9という好時計勝ちが裏目。JCを使えず有馬記念も8着と惨敗したが、しかし、アルゼンチンを2分30秒台で勝った4頭のうち3頭が、一年以内にGIを制覇(スクリーンヒーロー、トーセンジョーダン等)。今年は、自身のキャリアで最も重い57・5キロを背負い、いい意味で余力をもっても0秒2差・3着。本番への上積みを期待していい。 自在の立ち回りのぶん、ルルーシュを上位に置いたが、同斤量でアルゼンチン2着のアドマイヤラクティも、となると僅差。 エイシンフラッシュは、苦手とする平均ラップの天皇賞をしぶく3着。この馬の特性を知りすぎるほど知っているデムーロだったが、残り1Fでインに切れ込むか外に持ち出すか。珍しく迷いもあったように思う。たぶん、今年のJCはスロー。デムーロは、昨年の天皇賞同様、捨て身のイン勝負にかけてくる。 ヒットザターゲットも、よくよく天皇賞を見直すと、終い脚は使っていた。良馬場なら、武豊なら、あの京都大賞典もあったかと、考え直す馬である。
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