この一年間を振り返る

──今回の「AIつれづれ草」は、予測師ウマーブルの「ウマい馬券」デビュー一周年を祝して、対談形式でお届けます。早速ですが、現在の数字(年間回収率106％、年間的中率20％)をご覧になった率直な感想からお聞かせください。

マジックウマ：一年前の対談(https://yoso.sp.netkeiba.com/?pid=column_detail&id=32)でAISSさんが「回収率の最大化を目指しながら、的中率も両者の間となる20％前後を想定している」とお話しされていました。バックテスト(過去の結果を用いたシミュレーション)でもそういう数字が出ていたとはいえ、いざ運用してみたらまさにその通りの結果になって、少し驚いています。

AISS：回収率106％という数字は素直に嬉しく思いますが、春先は5週連続プラスからの連敗などもあり、夏頃までは80％〜90％台後半を行き来するような状態でした。秋によくなったのは、AISSのアップデートや買い目の調整などの積み重ねが奏功したのでしょうが、本来はその前段階でも100％は超えている想定だったので、まだまだ改善すべき点はあると考えています。

マジックウマ：一日36レースの中から期待値の高い馬を選んでいくので、マジックウマとAISSの◎が重なることは少なくありません。配信予想の難しさは、そこから先の買い目構築なんですよね。的中時の買い目をご覧いただくと明らかなのですが、2番手、3番手の評価を誤っていたら高額払い戻しを得られていないケースがたくさんあります。2番手、3番手をどの馬にするのかが◎の選定と同じぐらい重要で、その部分をAISSさんが上手にチューニングしてくださいました。

AISS：買い目については、バックテストのデータが2021年夏以降のものだったので、正直言うと、データが少なかったんです。そのため、バックテストで設定した買い目が、実際に運用した際にその通りになるか半信半疑だった部分がありました。今年の後半に成績が向上したのは、2022年前半までサンプルに含めたので、精度がアップしたのだと思います。

マジックウマ：AISSさんは、データから最適な買い目を見つけ出す能力が非常に高いように感じます。言葉にするのは簡単ですが、私が見ている完成形のデータとなるまでに膨大なボツデータがあるはずで、それこそ買い目は血の滲むような努力の結晶なんですよね。AISSさんは優しい方なので、一切、そういう素振りはみせませんが(笑)。

会心の的中を振り返る

──この一年で、「会心の的中」といったら、どのレースになりますか？

マジックウマ：うーん、マジックウマが貢献したレースがすぐ思い浮かばないので(笑)、2022年ウマーブル最大の払い戻し額となったライラック賞(8月7日札幌9R)を挙げておきましょうか。

──アサケレディ(5番人気)→ルーツドール(3番人気)→メタルスパーク(14番人気)の順で入線し、3連単は2388.2倍。3連複と3連単のダブル的中で、払い戻し金額は805290円となっています。

マジックウマ：マジックウマ、AISS、ウマーブルの3者とも◎はルーツドールで、ここの難易度はそれほど高くありません。このレースで3連単2388倍を当てるためには、メタルスパークを拾えること、そしてアサケレディを高く評価する必要があります。AISSさんとウマーブルはアサケレディを対抗評価にして、しっかり3連単を当てているのでさすがだなと。

AISS：確かに、一進一退が続いていた夏場にこの大きな的中が出て、流れが変わった気がします。そういう意味では、印象深い的中のひとつではありますね。

マジックウマ：AI予想という意味で、「会心」という言葉がしっくりくるのはマイルCSかもしれません。ウマーブルの印は◎セリフォス(6番人気)、○ダノンザキッド(8番人気)、▲ソウルラッシュ(5番人気)でした。上位人気3頭がシュネルマイスター、ソダシ、サリオスとそれなりに買い材料の多い馬だったなかで、安易にそこから◎を取らず、2番手3番手にもしっかり人気薄を置き、馬連、3連複、3連単まで的中。これは主観を入れないAIの強みが生きたように感じますね。

──AISSさんはいかがですか。

AISS：3つ考えていて、そのうち2つは今挙がったライラック賞とマイルCSですね。ウマーブルは2021年の朝日杯FSウィークから『ウマい馬券』に参加しているので、最初に迎えたG1が朝日杯FS。その時の◎がセリフォスだったんですよ。それを思い出した時、ちょっと運命を感じました。そしてもう一つは、5月21日東京3Rです。

──キタノブレイド(1人気)→チャールストン(8人気)→ロードマーシャル(9人気)で、3連複330.8倍、3連単1244.4倍。ウマーブルは単勝と3連単を的中し9800円→245080円の払い戻し、マジックウマさんも単勝、ワイド、3連複の的中で10000円→101160円を払い戻しています。

マジックウマ：AISSさん、お気遣いありがとうございます(笑)。

AISS：ははは。マジックウマさんが当てたからこのレースを選んだのではなくて、この日から買い目を少し変えたんですよ。もし前週までの買い目だったら3連単は拾えていなかったので、凄く印象に残っていて。

──3連単は2頭ー4頭ー6頭のフォーメーションになっていますね。

マジックウマ：2列目は2頭にとどめることが多かったので、前週までなら1頭ー2頭ー7頭とか2頭ー3頭ー6頭みたいなフォーメーションを組んでいたはず。4番手評価のチャールストンを2列目においての3連単的中はなかったでしょうね。

AISS：2着のチャールストンは指数4位、3着のロードマーシャルは指数6位だったので、まさに買い目を広げた部分に引っ掛かりました。ウマーブルはこういう買い目の機微に救われることが多いんです。買い目に手を加えた週に大きな的中が出たのは偶然でしょうが、チューニングの結果に手応えを得ると同時に、買い目構築の重要性を再確認したのを覚えています。

マジックウマ：ここで冒頭の話に戻るのですが、これは単に手を広げて当てにいったということではなく、バックテストの「4番手の馬を2列目に入れた方が精度が上がって回収率も上がるよ」という結果に基づいて、買い目を変えているんです。そして、変えた週に大きな的中が出て…これは、開発者としては最高に気持ちいい的中でしょうね。

有馬記念の見解。そして今後の抱負

──今週末はグランプリ有馬記念です。現時点でのお二人の見解を少しお聞かせいただけますか？

マジックウマ：皆さんも一緒だと思いますが、このレースは枠が出ないと断定的な話はできないですよね。

AISS：実は収録済みのnetkeibaTVさんの番組で有馬記念のお話をしているので、あまり具体的なことは話せなくて…。一ファンとしては、ジェラルディーナに勝って欲しいと願っています。というのも、競馬を始めてから最初の有馬記念を勝ったのが(ジェラルディーナのお母さんの)ジェンティルドンナだったんですよ。2着トゥザワールドで、馬券も当てた記憶があります。

マジックウマ：2014年の有馬記念ですね。あれを当てたのは凄いなぁ。

AISS：エリザベス女王杯のパドック映像で、ジェラルディーナが激しく首を振っている様子が映し出されて、それを観た時に、ふと「お母さんの有馬記念の時と一緒だな」と思ったんですよね。あぁ、懐かしいなと。

──昔から「有馬記念は好きな馬を買おう」と言われているので、それでいいと思います。

マジックウマ：私から馬券的な見地でお話しすると、期待値が乗っていそうなのは、ボルドグフーシュとジャスティンパレスの3歳馬2頭だと思っています。普通に考えたら、タイトルホルダーが一貫したペースを作るはず。イクイノックスの前走は2番手以降は実質スロー、ヴェラアズールの秋2戦もスロー寄りで、エフフォーリアは現状、速い流れを克服できていません。そう考えると、上位人気が予測される組は、タイトルホルダーが刻むであろう速い流れをこなせる裏付けがありません。

──3歳馬2頭は菊花賞からの臨戦ですね。

マジックウマ：菊花賞はタイトな流れで、内を通ったアスクビクターモアを外を回してハナ差まで追い詰めたのがボルドグフーシュです。血統的にもスクリーンヒーローの距離短縮で、いかにも期待値が乗っていそう。ジャスティンパレスが2走前の神戸新聞杯が凄く強い内容で、単純に本格化した可能性があります。あとはこの2頭がどこの枠に入るか。そしてタイトルホルダーの状態ですよね。まともなら、中長距離では抜けた存在だと思っているので、しっかり最終追い切りまでチェックしたいと思います。

──ありがとうございます。最終結論は「ウマい馬券」で確認させていただきます。では最後に、ウマーブル2年目に向けた抱負をいただけますか？

AISS：コラボとして一年間、お互いのアイデアを出しあいながら、一定の結果が出せたのが何よりです。来年以降は、時期による波を減らして、もう少し安定した成績を出せればと思っています。

マジックウマ：まずは、コラボという素晴らしい機会を作っていただいた関係者の皆様に感謝します。一年間、真剣に競馬に向き合ってきた中で、ちょっとしたことで大きな的中を得られたり、逆にちょっとしたことで大きな的中を逃したりと、勝ち負けが紙一重であることを痛感しました。今後も、ちょっとした気付きや変化の兆しを見逃さないようにして、AISSさんとも密にコミュニケーションを図りながら、来年はさらに進化したウマーブルをお見せしたいですね。

取材日　12月14日
取材・構成＝松山崇