○「レース走破タイム」について考える

先週7/3のCBC賞では、今村聖奈騎手が重賞初騎乗初勝利と大変話題になりましたが、同時に騎乗した
テイエムスパーダが芝1,200mで1分05秒8という日本レコードでの勝利という衝撃でした。

そこで、今回は「レース走破タイム」について考えてみます。

記憶に新しいところで、2,018年のジャパンカップではアーモンドアイが芝2,400mで日本のみらならず
世界レコードとなる2分20秒6のタイムで勝利しています。当時現地観戦していましたが、その強さに痺れました。

私は競馬歴が浅かったころは純粋に「速く走れる馬が強い」と思っていました。
しかし、レースタイムだけがすべてではないのも競馬であり、速い持ち時計で勝利した馬が上位クラスのレースで結果が残せないことや、日本で実績を上げている馬が海外で思うような走りができないという実情があります。

まずは、2,017年〜2,021年の芝距離別平均レース走破タイムを調べてみました。


当たり前ですが、距離が伸びるにつれて走破タイムもかかります。平均速度も算出してみましたが、こちらもイメージ通り長距離になるほど平均的なスピードが落ちることからも距離によって求められる力が違うのだな、と感じます。

更に今回は施行回数が最も多い芝2,000mの条件を、JRAのレコードタイム測定と同じく「3歳以上」で少し深堀していきます。ちなみに、2022/7/4時点で、3歳以上芝2,000mでの日本レコードタイムは
2011/10/30に行われたG1天皇賞秋でトーセンジョーダンが記録した1分56秒1です。

集計条件は「馬場状態」「開催年」「開催場所」「レースグレード」としました。結果は下記の通りです。


こちらも、芝の場合は馬場状態が悪化するとタイムがかかる、レースグレードが上がるとタイムが速くなりやすい、中山競馬場はタイムが出にくく、東京競馬場は高速決着になりやすいといった一般的な結果に落ち着きました。

他にもレース走破タイムを集計する条件として「斤量（特にハンデ戦）」「先行馬割合（レースメンバーの特徴）」「種牡馬」といったものが考えられます。

このように、「レース走破タイム」の評価は難しいです。全く同じ条件・同じメンバーでもレース展開次第で、レースタイムが大きく変わってしまう可能性もあります。
その数値自体が重要ではなく、あくまで「そのレース条件・メンバー構成で走った場合の標準タイムと比較してどの程度価値があるのか？」という評価が重要だと思っています。

競馬AIを作るうえで、「レース走破タイム」をどうデータ化するのか、というのも各開発者で分かれており、「そのままの加工なしの数値として」「レース内での相対評価（偏差値化）」「タイム指数を独自開発して指数化」するなどが一般的です。

今回は「レース走破タイム」という一つのデータだけですが、実際は他にも多くの項目があるため、データ加工の技術や関連する競馬の知識が求められます。

例えば今回の集計期間においては、開催年はレース走破タイムに影響あると言えないようですが、近年は馬場改修の影響などで高速馬場になりやすい傾向もあるのでそういったことを知っておかないと、数値が急に変わったとき開発者が気づけず、予測値に影響を及ぼす可能性もあります。

私自身も注意深くデータの観察と競馬関連情報を収集して適切なデータ加工につなげていきたいです！