○レース展開の予測を試みる

今週末6/26日は上半期を締めくくるに相応しいレースであるG1宝塚記念が開催されます。
実力馬はもちろん、ファン投票で人気のある馬も出走する予定で非常に楽しみです！
特に今年は、先行争いが激化しそうな顔ぶれでもあります。

逃げ馬としての代表格は「タイトルホルダー」「パンサラッサ」ですが、他にも多くの出走馬が先行で成績を残しており展開含めて結果がどうなるか興味深いです。

そこで今回は、「前へ行きそうな馬の出走状況によってレース展開がどのように変わるか？」について考え集計してみます。その集計結果は下図の通りです。


ここで、表中の言葉の意味を補足します。
・「前へ行きそうな馬」＝「前走の脚質が逃げ・先行」としました。
※「逃げ」＝３コーナー位置取りが１番手
「先行」＝３コーナー位置取りが「出走頭数の1/3以下」かつ「５番手以内」

たとえば、15頭立てで3コーナーの位置取りが4番手だと「先行」脚質と判断されます。

・「レース展開指数」＝計算式は控えさせていただきますが、この値が低いほど「ハイペース」、高いほど「スローペース」となるような指標です。
参考までに、2,021年で最もハイペースのレース（レース展開指数が最小）は4/18の3歳未勝利（新潟）であり、最もスローペースのレース（レース展開指数が最大）は3/7のアルメリア賞（阪神）でした。



前へ行きそうな馬が多いほど、ハイペースになりやすい（レース展開指数が低くなる）ことが分かります。
以前のコラムで触れた「レースの荒れやすさ」予測と同様、「レースのペース（展開）」予測の精度を上げる要
因は他にもあるはずですが、これだけでも傾向が分かりやすく出ました。

ちなみに、大阪杯の特別登録馬20頭（6/22時点）中「前走逃げ・先行した出走馬」は10頭いるので、「前走
逃げ・先行した出走馬割合」は約50%程度。これほど「前に行きそうな馬」が多いレースはあまりなく、ハイ
ペースとなる可能性は大いにありそうです。

○AI開発で心掛けること

ここで併せて伝えたいのは、
・レースが発走（結果判明）するまでに確定しない情報はなるべく使用しない！
ことです。

例えば、締め切りの数分で数字が大きく変化する可能性がある「確定オッズ（人気）」などです。今回であれば「前へ行きそうな馬」の判断で「そのレースの実際の位置取り」を使用してしまう、ことです。
過去のレースに対してはレース結果が分かっているので「実際の3コーナー位置取り」などで集計することができますが、これから行われるレースに対してはできません（今週末の宝塚記念でまだ誰が逃げるか分からない）。
「そんなの当たり前だよ！」と思われるような内容ですが、この部分は競馬に関わらず「AI開発（統計モデルでも）」するにあたっては特に注意すべき事柄です。

確定オッズを間違って特徴量としたAIを作ってしまった、というのはまだ可愛い方で、「着順」などを入れてしまうとアウトです。これは「情報リーク」といって本来AIが知りえない情報を学習時点で知ってしまっていることで過剰に精度が出てしまい、実際に運用すると思ったより精度が出ないという問題が生じます。

私も実は競馬AIを作り始めた当初は似たような恥ずかしいミスをしていました…
「AIを一度作ってしまえば予想も楽できてずるい！」と思われるかもしれませんが、私自身「情報リーク」など、データを使用してコンピュータに予想させることで起こりえるリスクを常に考えメンテナンスや改善にあたっています。

今回コラムを書かせていただいたことで改めて気を引き締めて開発に励んでいくと同時に、ウマーブルもしっかり結果を残して本格的な夏競馬に望めたらと思います！