ダノンデサイル。
初めて買う馬。
エピファネイア産駒の、牡馬。
良駒だ。
復帰戦がどこか様子をうかがいながら、待っていた。有馬記念→AJCCは、昔ならありえたローテ。だが、近年の「過保護なローテ」が全盛の時代としては、詰めて使ってきたなという印象。何の意味があるか。もしくは意味がないか。
あると思う。それはそれは恐ろしい”エピファタイマーの回避”。まずこれだ。この意味では詰めて使った方が安心感はある。エピファタイマー。巷でウワサの、突然エピファネイア産駒が弱くなる現象。所説あるようだが「4歳で弱くなる説」は間違い。ブロ-ザーホーンの様な晩成型の馬もいる。
”ある日、突然、弱くなる。”
これが正解で、最も多いのは「休養して戻ってきたら別な馬か!?というレベルで弱くなっている」という現象。しかも4歳時などピークの時節のはずの時も、おかまいなしに発動する。恐ろしい現象だ。エフフォーリアの4歳シーズンの全く見せ場もない姿は、そう簡単に想像できるものではなかった。昨年ではブローザホーンで、宝塚記念まではキレキレだったが、ちょっと休んで秋に京都大賞典に出てきたら、ビリ。そしてそのまま、弱いままでいる。衝撃でしかない。
前から提唱していることがある。エピファタイマーの呼び方を変えたどうかということだ。昔、ブライアンズタイム産駒にも似たような現象はあった。だが、当然晩成型のブライアンズタイム産駒もいた。「いきなり弱くなる」。そこが似ている。なつかしい所では、ダンツフレームなど4歳の春シーズンで安田記念を2着、宝塚記念を快勝。しかし、秋競馬のG1では特に見せ場なし。ブローザホーンにちょっと似ている。
呼び方をこうしよう。『ロベルト系タイマー』。もともと、この血統には、いきなり走らなくなる現象があったのだから。ブライアンズタイム産駒が「これでもか」とばかりに90年代スパルタローテでレースを使い込んで強くなった。エピファネイア産駒にもその傾向は内包している。そういう感覚があって、有馬記念(3着)に出た4歳ダービー馬が1月に始動するのだと思う。安田翔師にもそういう感覚はありそうだ。
”なんか、普通に3か月も休ませたら、もうエピファアイマー出そうなんだけど感”
それを払拭したいところだと思う。なのでこれは良い使い詰めだと感じている。使い詰めといっても、そもそも4歳の秋に2戦しかしていないのだが。今は、ちょっと詰めて使っただけでびっくりする時代になった。
エビデンス・過去の似ている事例としては、4歳の始動戦をここに選んだエピファネイア産駒、アリストテレスに似ているか。昔、スペシャルウィークもここで復帰した。さすがにダービー馬らしい強さだった。
だからと言って今回、エピファタイマーが発動しない保証はない。エピファタイマーは普通に使っていてもいきなり「くる」。サークルオブライフが、桜花賞で豪脚を見せて4着になり、いかにもオークスを勝ち負けしそうなタイプに見えながら、12着。そのまま終わったなどということもあった。こんな、普通の調教とローテをちゃんとやっていても、いきなり発動はありえる。
あとは、鞍上交代のタイミングだろう。陣営は「乗り替わり」ではないと強調しているが。新味を求めているのだと思う。
鞍上は、戸崎騎手。
せっかくの交代があえてこの騎手でどうかはともかく、「中山コースで先行馬」なら任せられるはず。ジャスティンミラノの皐月賞のような競馬、レガレイラの有馬記念のような競馬、あれをイメージしてもらいたい。
今の中山で後方に控える競馬はいらない。スローなら2~3番手から。ペースが流れたら5~6番手から。馬自身も、本来は正攻法タイプ。それを証明する競馬をしたい。
相手を少し、見渡してみる。
レーベンスティールが出てくる。新潟大賞典(着外)、オールカマー(1着)と単複を買った馬。荒々しいリアルスティールの良駒。今回も有力だと思う。荒々しい理由は、母父のトウカイテイオーからきているもの。良い意味で、闘争心に繋がっている。そして田中博調教師が上手く育てている。ただ、気性的に、新潟大賞典のような思わぬ大敗があるタイプ。
天皇賞・秋では、評価を下げた。けっこう人気で負けていたが、まだ国内G1では実力が足りないと見る。
G2なら出番だ。ただし、本質的には差し馬なので、今の前が残る中山で差し届くかどうか。オールカマーはルメールの騎乗があまりにも完璧すぎた。今回はあれの再現の騎乗までいけるかどうかもポイント。
そして、セントライト記念もモレイラが「これ以上何がある!?」というほどの無駄をそぎ落とした完璧で鮮やかな騎乗を見せている。中山芝2200mはこういう強烈な好騎乗で勝ってきているという現実はある。やはり、今回、ルメールがまたそれを出せるかどうかがカギになる。位置取り、そして「今回の競馬の形」がどうなるかを含めて、注目したい。
<本島修司の競馬分析ワード>
【馬単位】:2008年に本島が発案した概念。一般的な「このレース、どの馬が来るか」ではなく「この馬、どのレースなら来るか」という見方に切り替えること。馬1頭と真摯に向き合うための概念。
【良駒】:その種牡馬の「産駒らしさ」が濃く出ている馬。『信頼性』が見込め、『ポテンシャルの高さ』を測る目安のひとつにもなる。
【エビデンス】:本来は「根拠」という意味の言葉だが、似ているパターンや、似ている状況で「必然の好走が出来た過去の事例がある」という意味で使用している。
公開日時:2025/01/24 18:59