2023年の競馬開催において、京都競馬場のグランドオープン、トラッキングシステムの導入、JRAHPでのレースライブ配信などさまざまな変更がありますが、今回はその中でも「負担重量の変更」について考えます。こちらざっくりと「負担重量(斤量)が1キロ増える」というものです(3歳の馬齢重量の引上げは令和6年度から)。目的としては騎手の負担を減らすものですが、当然競走馬にも影響が出ることは容易に想像できます。

　まず下表は、2022年の中央競馬において馬体重区分別の成績です。もちろん性別や馬齢、芝/ダートなどによって若干傾向は変わりますが、おおまかに「よほど馬体重が軽くない限りは大きな影響がない」と捉えられます。


　馬体重単体の要素で見たときは、多くの方が考えているように“馬体重の変化”に注目したほうが良いでしょう。下表は前走からの馬体重変化区分別の成績です。「馬体重が大幅に減っていると明らかに成績が下降する」「馬体重大幅増加も全体の傾向としては良くはない」ことが確認できます。


　次に、下表は斤量区分別の成績です。こちらもざっくりと、「51.0kg以下、56.5kg以上など比較的軽い/重い斤量を背負った出走馬の成績はやや低調」と言えそうです。ただし、51.0kg以下など軽い斤量は主にハンデ戦で出現し、56.5kg以上など重い斤量は定量戦で出現する傾向にあります。特に高斤量に関しては例えば有馬記念など3歳以上古馬混合戦で3歳馬=低斤量が有利(古馬=高斤量が不利)という結論が考えられるでしょう。


　ここまでは、「馬体重」「斤量」それぞれの項目での集計結果となっていますが、本題である「斤量がこれまでより増えたときの影響」はどうでしょう？単純に馬体重が大きければ有利となるのでしょうか？

　下表は、各馬について斤量比(斤量÷馬体重)を4区分に分けて集計したものです。斤量比とは「ある馬が背負う斤量が馬体重に対してどの程度なのか」を数値で表したもので、この数値が低いと馬体重に対して軽い斤量、数値が高いと馬体重に対して重い斤量という解釈です(「体重比」と表現される場合もあります)。例えば、先週末(2023/1/29)のG3根岸Sを制した「レモンポップ」は斤量57.0kgに対して馬体重522kgでしたので斤量比は57.0/522≒10.92％となります。


　表のとおり、特に斤量比12.11％以上では明らかに成績が下がっています。今回の斤量変更で馬体重の傾向はほぼ変わらず、対して斤量のみが増えるので、単純にほぼすべての馬の斤量比が増加することになります。するとこれまでより当然競走馬の負担も増えこれまでのようなパフォーマンスが発揮できない可能性も否定できません。もちろん馬体重が大きいほど斤量比は低くなりやすいので、その分斤量増加の影響は馬体重が小さい馬より少ないと思われますが、大事なのは「特定の馬の斤量が馬体重に対して適切か(十分なパフォーマンスが発揮できるか)」という点でしょう。

　AISS(ウマーブル)でも「馬体重」や「斤量」といったファクターはもちろん、「斤量比」といった競走馬の能力を数値化するのに必要と考えられるファクターも積極的に入れるようにしていますが、同時に重要なのは、それぞれのファクターをどれほど重視するかです。レース条件や競走馬の育成環境などによって、「馬体重」や「斤量」の重要度は変わってくるはずです。その時にそれぞれのファクターの重みづけを最適化するのは困難であり、逆にその部分を半自動的にAIは行ってくれます。ただし、馬体重など数値上で判断できても、馬体そのものや馬の性格などはまだまだ数値化が難しくAIと差別化が図れる部分だと思いますので、「他の人・コンピュータが苦手としている」ファクターによる予想を重視するのは馬券成績を向上させるうえでカギとなるでしょう。