その契約書に印鑑を押した時、得体のしれないワクワクした気持ちがやってきた。なぜかというと、それは、これまでに自分が何度かやってきた書籍出版の契約とは違うものだからだ――。

　はじめまして。本島修司と申します。競馬を中心に、物書きの仕事をやっています。今回、netkeibaのファンの皆様の前に、初めて出せていただくことになりました。そして、9月10日・9月11日の週末から、ウマい馬券のコンテンツに参加させていただきます。

　これまで僕は、いくつかの競馬の拙書を書いて世に出す仕事をしてきました。主に、「取材」ではなく、レースや馬を「分析」をして書く側としての活動でした。

　競馬との出会いは、まだ学生の頃。サクラローレル、マヤノトップガン、マーベラスサンデーが3強として戦っていた時代です。

　当時の競馬ファンなら誰しもの記憶残っているであろう、ナリタブライアンとマヤノトップガンが叩き合いを演じた阪神大賞典も印象深い出来事です。これほどまでに、レースをひとつ見るだけで「ただのギャンブルではない、これはスポーツなんだ」とわかる光景は、なかなかないと思います。近年、日本の競馬に大きな爪痕を残したディープインパクトやオルフェーヴルのレースもそうですが、「競馬とは何か？」と聞かれれば、それは「ドラマ性のあるスポーツ」と答えます。

　その後、大学生だった僕は、幸運なことに在学中に競馬の書籍を書く仕事をさせてもらい、そのままそれがライフワークになりました。競馬が仕事の一環になってからは、「全ては自分が作る競馬本の質を高めるために」という気持ちが強く、研究に没頭していました。それが自分の20代の日々でした。

　普通ならば、競馬は「馬券を当てたくて研究をするもの」だと思います。ですが、僕の場合は「自分の本の内容を濃くするため」に、過去の事例を噛み砕いて分析し、ノートを作り、勉強と研究を重ねました。結果として、いくらか、競馬書籍というジャンルに自分の名前を残す作業ができたかもしれません。


　あれから20年ほどの月日が流れました。今、日本が、そして世界中が暗いニュースで溢れています。戦争、暴力、今だに終わりの見えない未知のウイルスの感染拡大。特に「コロナ以降の世界」は、私達のライフタイルを大きく変えてしまいました。

　そんな中、コロナ初年度となった2020年に、唯一、液晶画面の中で無観客ながら動いていたのが『競馬』というコンテンツでした。

　世界中の医療施設の映像が、まるで恐い映画の様にすら見える惨状だった、あの年。初めての緊急事態宣言の発令。全てのスポーツが中止を余儀なくなれました。ところが、液晶の中で走る馬達を見て、「いつも通りだね」と多くの人が口にできたコンテンツがありました。いつもの日常として、安心感のあったスポーツがありました。

　それが、自分が仕事で最も携わってきた『競馬』でした。

　その時から、僕の思いは大きくなっていました。20年ほど自分が書くことがなかった、予想記事の執筆というコンテンツで、文章を書かせていただく仕事がしたいと。多くの物事がデジタル化が進む時代に、その道こそが、競馬ファンの「平穏な週末」を作る、一番役に立つ執筆作業かもしれないと。そして今日、このコラムを書きながら、『ウマい馬券』でのデビューへ想いを馳せているところです。


　若輩者の私を受け入れてくださったnetkeibaのスタッフの方々、そして今、ここまで読んでいただいた、初めてお目にかかるnetkeibaファンのみなさん、ありがとうございます。新人です。ですが、精一杯、レースと馬の分析をします。そして、少しでも中身のある解説文を書かせていただく所存です。みなさんに、僕の毎週の分析と、総合的な見解、その全てを見ていただけることを、本当に楽しみにしています。

　9月10日(土曜日)と9月11日(日曜日)の週末から、スタートを予定しています。

　文章で描く、競馬分析の中で。

　ぜひ、お会いしましょう。


2022年9月2日　本島修司


＝次回は、馬単位発案者の“レジェンド”本島修司の、分析の方法を公開！＝