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NEW樋野竜司 政治騎手の視点で波乱を見抜く
クロワデュノールとマスカレードボール。昨年のジャパンC以来となる対決を、僕はとても楽しみにしています。この2頭には、これからの日本競馬を作っていく存在になってほしいという期待があるからです。 以前、「日本競馬10年周期説」という、少し怪しげな説を書いたことがあります。 話の出発点は1995年。サンデーサイレンスの初年度産駒であるタヤスツヨシがダービーを勝った年です。日本競馬を大きく変えたサンデーサイレンスの血が、その最初の世代からダービー馬を送り出しました。 それから10年後の2005年、同じサンデーサイレンス産駒のディープインパクトが無敗で三冠を達成します。タヤスツヨシもディープインパクトも、サンデーサイレンスから見れば「子」。1995年に始まった子の時代が、10年をかけてひとつの頂点に達したようにも見えます。 ここから、さらに10年ずつ時計を進めると、血統の世代もひとつずつ進んでいくのが面白いところです。 2015年のダービーを勝ったドゥラメンテは、父こそキングカメハメハですが、母アドマイヤグルーヴがサンデーサイレンスの娘。つまり、母を通じてサンデーの血を受け継いだ「孫」です。同世代のキタサンブラックも、父ブラックタイドがサンデーの息子なので「孫」。リアルスティールも父がディープインパクトですから、やはり「孫」にあたります。 しかもブラックタイドは、ディープインパクトのひとつ年上の全兄。2004年、2005年にクラシックを走った兄弟が、約10年後にはそれぞれキタサンブラックとリアルスティールを送り出し、ドゥラメンテと同じ世代でダービーを一緒に走っていたわけです。 そして2025年。ダービーを勝ったクロワデュノールの父はキタサンブラック、祖父はブラックタイド、曾祖父がサンデーサイレンス。今度は「ひ孫」がダービー馬になりました。2着のマスカレードボールも、父ドゥラメンテ、祖母アドマイヤグルーヴを通じてサンデーにつながる「ひ孫」です。 2005年は子、2015年は孫、2025年はひ孫。サンデーサイレンスの血が、父を通じ、母を通じ、別の血とも交わりながら、10年ごとに次の世代の主役を送り出している。そう考えると、2015年に競い合った馬たちが、10年後には父としてダービーでしのぎを削ったことにも、ひとつの大きな流れを感じます。 ならば、その先の10年を担うのは誰なのか。昨年のダービーで争った2頭には、競走馬としてはもちろん、その先の種牡馬としての未来まで期待したくなるのです。 なかでもクロワデュノールについては、どうしても忘れられないレースがあります。昨年のプランスドランジュ賞です。 正直なところ、僕は初めて耳にするレース名でした。凱旋門賞の前哨戦とはいえ、まずはロンシャンの馬場を経験させるために選んだ叩き台という印象。しかし、実際にレースを見ると、そのレベルもクロワデュノールの走りも、想像していた以上に優秀に映りました。 これは、ひょっとすると凱旋門賞を勝てるのではないか。 日本馬の挑戦には毎年期待していますが、このときは本気で、その可能性を感じました。 ところが、本番では大外枠。さらにレース直前には大雨に祟られました。外から前へ出して強引にハナを奪う競馬となり、直線では余力を失って14着。もう少しいい条件で走らせてあげられたら、という思いが残るレースでした。 その凱旋門賞を勝ったのが、プランスドランジュ賞でクロワデュノールの2着だったダリズです。しかも今年は連覇を達成。ロンシャンでの成績は【8-1-0-0】となりました。 9戦して8勝、2着が1回。その唯一の黒星をつけたのが、クロワデュノールなのです。 こう書くと、「プランスドランジュ賞はあくまでも叩き台。賞金の安い前哨戦を、ダリズが本気で勝ちに来ていたわけではない」という反論があると思います。 ただ、それを言うなら、クロワデュノールのほうがより強く言えるでしょう。 わざわざフランスまで遠征した目的は、凱旋門賞を勝つこと。僕はクロワデュノールを休み明けから動けるタイプとは見ていませんし、あのレースも本番に向けて上積みを残した状態だったと考えています。そのクロワデュノールが、今では世界最強クラスの一頭と呼べる馬を、相手の庭で負かした。ゴール前のダリズの追撃を余裕を持って残したという事実には、もっと価値を認めていいのではないでしょうか。 ダリズがその後もロンシャンで勝ち続ける姿を見るほど、あのとき「ものすごくレベルの高いレースだ」と感じた自分の感覚は、間違っていなかったと思うのです。 クロワデュノールは今年の宝塚記念でも、春のGⅠ三冠がかかった一戦でレース直前の大雨に祟られました。大事なところで運が向かないのは気になります。それでも、すでにGⅠを4勝しているのですから、この馬の地力は相当なものだと思います。 父キタサンブラックにも、そんなところがありました。僕には、派手な勝ち方で強さを見せつけるというより、気づけばまたひとつタイトルを積み重ねている馬に見えました。その父は、最後にはGⅠを7勝。クロワデュノールにも、これから実績を重ねていく余地がまだまだあると思っています。 そして、そのクロワデュノールと再びぶつかるのが、マスカレードボール。昨年の天皇賞(秋)を勝ち、ジャパンCではカランダガンとの死闘で現役最強クラスの力を示した馬です。このライバルがいるからこそ、クロワデュノールの物語も、もっと面白くなるはずです。 いつか2035年のダービーで、この2頭の産駒が争う日が来るかもしれません。サンデーサイレンスの子から孫、ひ孫へと続いた物語が、さらにその先へ進んでいく。そのとき、今年の天皇賞(秋)を思い出すことができたら、競馬を見る楽しみがまたひとつ増えます。 クロワデュノールの物語は、まだまだこれからクライマックスを迎える。僕はそう思っています。そして、マスカレードボールとともにどんな時代を作っていくのか。その続きを楽しみにしながら、今年の天皇賞(秋)を予想してみたいと思います。【狙い馬の見解】◎ クロワデュノール:C.デ 58/宝塚記念は2着で春三冠は惜しくも達成できず。凱旋門賞に続いてレース直前の雨に祟られた。ただ、すでにGⅠ4勝。父キタサンブラックに似ていると思うところは派手はパフォーマンスがなく強そうに見えないが、気づけばGⅠタイトルを獲得しているところ。東京の芝は例年に比べるとタフな状態で、地力勝負に持ち込みやすいのは歓迎では。鞍上のC.デムーロ騎手は東京だけ重賞勝ちがなく、東京の勝率が悪いので苦手としている可能性があるが、それは超一流が一流にグレードダウンするくらいの話で、北村友騎手からの乗り替わりがマイナスになることはないと思う。強い馬であることに異論はないと思うが、馬券予想で推すのには何故か勇気が必要で、疑問視している予想家も多い印象。しかし、そういう馬なので勇気をもって推したくなる。○ マスカレードボール:ルメー 58/GⅠタイトルが昨年のこのレースのひとつしかないが、昨年のJCではカランダガンと死闘を演じ2分20秒3という驚異的なタイムを記録しており2着とはいえパフォーマンスは現役最強クラスを証明するもの。前走のキングジョージは敗因を上げるとキリがないので度外視でいいと思う。右回りではスムーズさを欠くことが多いが、得意の東京に戻ればまたいい走りを見せてくれると思うので、ここは巻き返しに期待したい。▲レガレイラ:岩田望 56/ここはダービー以来となる東京でのレース。ホープフルS、有馬記念を制していて中山巧者のイメージが強いが、ダービーは2番人気で5着と人気を裏切ったとはいえ不向きな流れを33秒2で追い込んでおり、負けて強しの競馬はしている。前走のオールカマーは馬場が敗因で評価を落とす必要はないと思う。天皇賞(秋)を使ってきたのは、埋もれたままになっている適性や能力を引き出したい狙いがあるのでは。能力的に見劣る馬ではないがここは人気を落としそうなので、巻き返しに期待したい。☆シェイクユアハート:古川吉 58/前走の札幌記念は直線の強烈な追い風に乗って伸びたもので余計に強く見えたが、風の恩恵を差し引いても強い内容。東京を走るのは初めてだが、中京の重賞を2勝しており本当は左回り巧者の可能性もある。人馬ともに充実している今ならGⅠでも一発ありそうなので、おさえたい。△ダノンデサイル:戸崎圭 58/GⅠ4戦連続3着とあと一歩が足りないが、ダービーの勝ちっぷりが今でも印象的で本来の姿はこんなものではないという思いもある。ただ、ひと世代下のクロワデュノールやマスカレードボールやミュージアムマイルといった馬たちに常に先着を許しており、この世代の上位馬を負かさないと上には上がれない。左回りベターで条件好転するが、ここで大きく上昇し逆転するイメージが湧かないので、能力は評価してもここはおさえまで。【他の馬の見解】 2 エルトンバローズ:松若風 58/前走の毎日王冠は中団より後ろからの競馬になってスローの前残りの展開で出番がなかった印象。しかし。もともと立ち回りの上手さが武器で相手なりに走れるのが長所だったのに近走は苦戦が目立つようになっている。良績が1800mまでしかなく相手強化の2000mで前進は難しいのでは。見送りたい。 4 レディネス:横山典 58/札幌記念3着、毎日王冠3着と連続好走しているが、いずれも好位のインで脚を溜めた鞍上の好騎乗が好走の要因と思う。前走はスローで前が止まらない流れだったとはいえ前を脅かすような伸びはなく、相手強化のここで前進は難しいと思う。見送りたい。 5 シャンパンカラー:内田博 58/出遅れ癖も徐々にマシになり、ちょっとずつ距離を延ばして追走が楽になればパフォーマンスも上がるという狙いかもしれないが、1800mの毎日王冠で特に見せ場もなく13着。ここは前走から一気に相手が強くなる。前進は難しいと思うので、見送りたい。 6 セイウンハーデス:幸英明 58/西山オーナーの寛解退院を祝うように毎日王冠を勝利。昨年のエプソムCをレコードで圧勝しており東京芝1800mがピッタリの印象。昨年のこのレースでは上がり32秒4で7着と悪くない競馬をしており東京芝2000mも悪くない競馬をしていたが、適性では若干劣るのでは。相手も強くなるし、前走は1枠1番の恩恵もあった。ここはそこまで上手くいかないと思うので、様子見たい。 8 ジュンブロッサム:杉原誠 58/前走のオクトーバーSは3着に好走し、1年半ぶりの馬券圏内。ただ、特筆できるような点はなかったし、ここはGⅠで一気に相手が強くなるので再度好勝負は難しいと思う。見送りたい。 9 ホウオウビスケッツ:岩田康 58/前走の毎日王冠は千通過59秒8というタイムを見て勝ったと思ったが、結果はセイウンハーデスに差されハナ差の2着。マイペースに持ち込めたと思うので2着とはいえ評価できない。一昨年にこのレースで逃げて3着に好走しているとはいえ、これもスローで逃げて粘り切れなかったもの。2000mへの距離延長はマイナスと思うし、終いの粘りが足りない印象があるので、様子見たい。 10 ネブラディスク:川田将 58/リスグラシューの半弟という良血馬。前走で3勝クラスを勝ち上がってオープン入りしたばかりだが、底を見せていないので逆に不気味。ただ、かなり前向きな気性で折り合いが難しいので、小倉の芝1800mから東京の芝2000mに変わるのは不安。道中脚を溜められない懸念があるので、ここは様子見たい。 12 コスモキュランダ:丹内祐 58/前走のオールカマーはスタートで出遅れ、圧倒的にインが有利で外を回っての挽回が不可能な馬場だったので度外視でいいと思う。宝塚記念が4着、昨年の有馬記念が2着とGⅠでも持続力勝負に持ち込めば好走できる実力馬。ただ東京では4戦してすべて掲示板外と切れ味を問われる条件では苦戦が目立つ。ここでの巻き返しは難しいと見て、見送りたい。 13 リアライズシリウス:津村明 56/前走の毎日王冠は2番手につけ上手く自分の形に持ち込めたように見えたが、直線伸びず7着。切れ味勝負に持ち込んでいいタイプとは思えないので、ここは前走の反省から敢えて速めのペースで先行するかもしれない。この秋の3歳馬の苦戦傾向から舐められた人気になりそうなので馬券妙味的観点からは美味しい馬になりそう。しかし、春のクラシックで活躍した馬のなかでは自分の好みのタイプではないし、ここでは単純に力不足の可能性もあるので、様子見たい。 14 タガノデュード:M.デ 58/大阪杯4着、天皇賞(春)6着、宝塚記念5着と馬券圏内はないものの、春のGⅠを盛り上げた一頭。前走のチャレンジCの11着はスタートで出遅れてしまったし、GⅠに向けての叩き台と解釈することもできそう。ただ、調子の波が大きいタイプではなく使い込んでも安定して走るタフさがある反面、一変するイメージはない。父ヤマカツエースは現役時代に東京では惨敗ばかりで、この馬も東京向きの印象がない。巻き返しは難しいと見て、様子見たい。 15 サクラファレル:佐々木 58/デビューからすべて掲示板を確保し大きな壁にぶつかることなく、重賞連対まで出世。まだまだこれから伸びそうな雰囲気のある馬だが、これまでのレースぶりで判断するとなると、直線の長い東京ではゴール前で脚色が鈍る印象がある、肝心なところで踏ん張ることができない恐れを感じるので、ここは様子見たい。 16 ジョバンニ:松山弘 58/前走のチャレンジCでようやく初重賞制覇。ホープフルSの2着馬で、ここで人気のクロワデュノールやマスカレードボールと同じくらいの期待を背負っていた時期もあるが、3歳夏以降に期待された成長が出来なかった印象。急激に力をつけて同世代のトップランナーに追いついて来ている印象もないので、ここは様子見たい。
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